山頂の気温はふもとより低い
朝日

 シェゾはどちらかというと夜行性である。それでも寒い時期にしかも深夜を通り越して夜明けも近いこの時間に外を出歩くことは珍しかった。そこでさらに珍しい人物に出くわした。
「アルル、お前何やってんだ?」
「日の出見ようと思ってさ」
「んなもん見るためにわざわざ夜更かししたのか?」
「今日の日の出は特別だもん!初日の出だもん!」
 それに夜更かしじゃないよ、早起きだよと言ってくる。
 新しい年の始まり。年月の経過など不老の肉体にさして意味はないが、それでも感慨が無いわけではなく。
「ちょっと来い。どうせならいい場所で拝みたいだろ初日の出」
 アルルの手を取って空間転移したのはきっとその感慨の所為だった。

「寒いー!!」
 空間転移したのはとある山の上だった。周囲の山々がそうであるように一面の銀世界。確かに眺めは良いが日の出前というただでさえ最も空気が冷える時間。さらに気温の低い山頂部に準備もなしに転移したのだからアルルが騒ぐのも当然だった。
「ぼく寒いんだけどー!!」
「だぁぁあ!うるせぇ!!」
 ばさ、と暗闇がアルルを包む。シェゾの外套だった。
「魔導力のためだからな」
 そっぽを向いたシェゾの頬が赤かった。アルルには見えなかったけれど。
 静かに時間が流れ、やがて空が白んできた。

「わぁ・・・!」

 その年最初の太陽がふたりを照らし出した。

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