お天気
シェゾは夕暮れ時の街道をひとり歩いていた。
立ち止まり見上げた西の空は黒い。黒い夕焼け。明日は雨だろう。
「あーした天気になーれー!」
再び歩き始めたシェゾの背後から聞き覚えのある声。同時に頭頂部に衝撃。
「あー!シェゾー、ごめんねー!」
「なにしやがる!アルル!!」
「明日の天気占ってたんだよ」
振り返れば片足はだしのアルル・ナジャ。いつものブーツの片割れはシェゾの足元に転がっている。衝撃の正体はこれらしい。
「あーあ。明日はくもりだよ!」
横倒しになったブーツを目指して片足で飛び跳ねて来る。釈然としないシェゾは、ぴょこぴょこと揺れる亜麻色の髪を見ていて意趣返しを思いついた。シェゾはアルルのブーツをひょい、と拾い上げると頭上に上げてしまう。
「なにするのさ!」
「人にものをぶつけといてその態度はねぇだろうが。」
「ちゃんとあやまったじゃないか!!」
片足あげたままブーツの片割れを取り返そうと纏わりついてくる。しかし悲しいかな。二人には頭ひとつ分の身長差があった。シェゾに腕を伸ばされるとアルルにはどうやっても届かない。
「馬鹿ー!!へんたいー!!かえせー!!」
ウィッチは夕闇の迫る空を飛んでいた。
「あら?」
地上に覚えのある声と姿。アルルとシェゾだ。この二人が一緒にいるのはわりとよくあることではあった。しかし様子がいつもとは違う。今のところシェゾ優位。
「あらまぁ。明日は雨かしら」
翌日の天気は晴れだったらしい。
あたるも八卦あたらぬも八卦。
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