愛・束縛
「ぼくが死んじゃったらさっさ忘れていいからね」
アルルのなんの脈略もない呟き。
あまりの突飛さに反応を返すのも阿呆らしく、俺は無視を決め込んだ。
「そりゃ寂しいけどさ。でもぼくはきみに幸せになってほしいから」
それでもアルルは続ける。
「ぼくはきみが大好きだから、だから忘れてね?シェゾ」
夢を見た。遠い遠い昔の夢。
ずっと昔に死んだ女の夢。
あいつの言葉にも関わらず、俺はあいつを忘れていない。
別にあの言葉が本心でなかったとか思ってるわけじゃない。
あの言葉が心の底からの言葉だったと分かってる。
だからこそ尚更。
尚更俺は忘れられない。絶対に。
その優しさがあまりにも鮮烈過ぎて。
その愛があまりにも眩しすぎて。
時とともに風化するどころか痛みすら感じるほどにくっきりと。あいつは俺の中に棲み続ける。
縛られぬことで縛られた俺は今日も彼女の夢を見る。
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