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「闇の公子」を読んだよ


魔導物語、というかサタンやシェゾの原型ときいて読みました。

妖魔の愛

物語終盤、世界というか人間は危機を迎えます。(元凶の元凶はアズユラーンなんですが)
不幸を振りまいてもてあそぶべき人間が見当たらなくなりアズユラーンは世界の異変を察知します。
そして身を呈して世界を守ります。(後で復活しましたが)
サタン様は後期になって世界のあるじ、守り手という側面が強くなっていったわけだけど
原型にもやっぱり世界の守り手という側面を持ってるんだなーと思いました。
まあニュアンスは異なりますが。
世界のあるじという属性が付与される前の初期のサタンさまも世界が危機を迎えたら身を張って闘うんじゃないのかなと思いました。

シヴェシュの運命

魔導絡みの感想はさておき、一番好きなキャラはシヴェシュです。
彼は人間なのですが赤ん坊の頃にアズユラーンに連れ去られ妖魔の都で育てられ、アズユラーンの寵愛を受ける身となります。
しかし彼は人間であったため太陽の娘に魅かれ、それがアズユラーンの怒りを買い死ぬことになります。

人として生を受け、妖魔の世界で生き、しかし人であることから破滅する。
私の萌えツボ直撃であります。


・他のシリーズも読みましたので以下20110827追記

闇の魔術師

個人的には<死の王>はシリーズで一番壮大さを感じる物語です。
ところで<死の王>には「闇の魔術師」という章題があります。
この章は不死身の魔術師ジレクが海底の民の魔法をその王家から収奪(といって差し支えあるまい)するエピソードです。
「力の収奪」「不死身」のイメージを考えると一番シェゾの原型(米光魔導で示されたイメージの範囲で)っぽいという印象を受けました。

主人公たるシミュとジレクは破滅するのに対し
死の王ウールムに変わり地底を治める死の女王となったナラセン、死の王の使者となったカザフェら女性が勝ち組という構図が面白いです。


ジレクの再登場

ジレクは<熱夢の女王>で再登場します。
愛憎に身を焦がした人生のはてに穏やかな若者の導き手となる立ち位置がわりと好みです。


妖魔の王の恋人と娘

<惑乱の公子>においてアズュラーンが恋人ドゥニゼルを口説きながら同時にドゥニゼルとの娘のことは道具と見做している所が面白いです。
そんなアズラーンの手をとることのないドゥニゼルも良いです。
アズュラーンがドゥニゼルの死の報復にその土地を滅ぼそうとするのをドゥニゼルが制止、愛を交わすシーン。
受け入れるところが面白いと思います。

<熱夢の女王>で数奇な運命を辿ったアズュラーンの娘アトメは闇の君である恋人の制止をもろともせず<生きる>ことを求めて永遠の命を棄て、人間になります。
やがて彼女は年老い、父アズュラーンとの再び対面します。
涙を流すことも叶わないアズュラーンの悲しみ、それを受け止めるアトメの老いながら(だからこそ)力強さ。
アズュラーンが愛し、別れたドゥニゼルとアトメ。
2人の存在は強大であるはずのアズュラーンをもってしてもままならなさであり、彼が手にすることのできない「強さ」でもあると思います。



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